prologue



  …それは世界の片隅の、何もなくなるはずだった荒野での出来事。

『………ん……』 

「お、気がついた?」 

『……ぅ?』 

「あー、ダメだ。まだ動くな。しゃべるのもダメ。
 黙って私の話を聞く。OK?」
 

『…………。』 

「うん、それでいい。
 とりあえず、現状の説明をしておこうか。 

 何があったのかは知らないけど、
 あなたは本当に酷い壊れ方で、ここに放置されてたの。
 今、私が治してるまっ最中。ヘタに動くと再起不能になる。
 動くなって言ったのはそういう事。」


『……なぜ…』 

「しゃべるなってのに」 

『ボクを修理しようと思った?
 壊れた戦器なんて、この地上にいくらでもあるだろう。
 ボクなんて……』
 

  「んー…。どうしてかしらね。
 ふと見つけて、なんとなく治せそうな気がした。
 で、実際になんとかしてみたくなった。ただそれだけ」


 『そう。だったら―…』

 ― 遥か遠方で爆発音 ―

「げ!もう追いついてきたの!?
 っと悪い、キミ。

 基盤の処置は終わったから、後はあいつに治してもらって。
 あいつの腕はこの世で私の次くらいに確かだから。
 それじゃ――」


  『……名前を』

 
「ん?ああ、私はルギッタ。
 恩着せたりなんてしないから覚えるのも忘れんのも好きにしてね。
 じゃーね!」




 『……ボクは…………』



  救った側にとっては、5分で忘れるほどにどうでもいい気まぐれ。

救われた側にとっても、完全に何の意味もない行動。



それでも世界にとっては
  それこそが 命運を決めた 物語のはじまり――